研究概要 |
我々は、慢性関節リウマチ(RA)患者滑膜組織由来の滑膜浸潤細胞を用いて、in vitroでパンヌス様炎症組織を形成する実験系と、滑膜浸潤細胞をSCID bg.マウス関節内に移入してパンヌス形成や関節破壊を高率に惹起する実験系を独自に開発した。このin vitroおよびin vivoヒト細胞モデルを用いて、パンヌス形成に直接関与する細胞の同定と、このモデルを応用した新しいRAの治療戦略の確立を目指した。RA滑膜組織由来滑膜浸潤細胞は、種々の細胞の混成である。滑膜浸潤細胞からT細胞を除去すると、in vitroでのパンヌス形成や炎症性サイトカイン産生、およびSCID bg.マウス関節内でのパンヌス形成や関節破壊は増強された。従って、滑膜組織浸潤T細胞は、RA滑膜炎におけるパンヌス形成の制御機構の一翼を担っているものと考えられた。一方、滑膜浸潤細胞から単球/マクロファージを除去すると、in vitroでのパンヌス形成や炎症性サイトカイン産生、およびSCID bg.マウス関節内でのパンヌス形成や関節破壊は完全に抑制された。さらに,継代培養した滑膜線維芽細胞単独ではin vitroおよびin vivoにおいてパンヌスは形成されないが、滑膜線維芽細胞に滑膜組織由来マクロファージを添加するとパンヌス形成が再現された。以上より、パンヌス形成には、マクロファージと線維芽細胞との相互作用が必要であることが明らかとなった。 in vitroにおけるパンヌス形成は、内因性PGE2産生を阻害するインドメタシンやその他のシクロキシゲナーゼ阻害薬により増強され、PGE1やペントキシフィリンなど細胞内cAMP上昇を惹起する薬剤により顕著に抑制された。さらに両者を併用すると相乗的にパンヌス形成が抑制された。この成績をもとに、PGE1とペントキシフィリン併用療法の有用性を検討する臨床試験を開始した。
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