滲出性中耳炎は学童期小児に多発し難聴を伴う再発生の疾患であるがその発症機序が不明で有効な治療法が開発されていない難治疾患である。これ迄は、それらの発症因子として耳管狭窄や閉塞による非炎症性捕空水腫説が有力であったが、近年、それら滲出液中に炎症性細胞や免疫担当細胞が検出され、中耳局所免疫応答不全が重要な鍵を担うとされ、とりわけ耳管扁桃の機能異常が注目されている。 しかしながら、現在、実験医学的研究に汎用されているラット・マウスなど齧歯目実験動物は扁桃(耳管扁桃を含む)を欠く事から、これ迄、実験動物を対象とした中耳炎に関する基礎的研究は殆どなされていない。 これらの点に鑑み本研究課題では耳管扁桃を有するスンクスを対象に顕微鏡にて観察可能な人工抗原を用い実験的慢性中耳炎や上気道炎を惹起し、耳管扁桃局所と全身性リンパ組織との関係(腎糸球体への扁桃局所抗原や抗体の移動、標識リンパ球の扁桃へのhoming)など検索し、当初実験計画に従いスンクスの中耳炎モデルとしての実験動物学的評価を行った。 本年は当研究課題の最終年度であるので、当初研究計画に則り、それらの成果をまとめ第4回国際扁桃・アデノイドシンポジウム(ベルギー、チェコ)に発表し実験的中耳炎モデルとしての専門家の評価を受けることができた。それの実験的中耳腔感作では感作側耳管扁桃の炎症性肥大とそれによる慢性的耳管狭窄像が得られたことは、本症の発症機序を理解する上で興味ある所見であった。また、この様なケースでは免疫応答が感作側耳管扁桃に限局するのみでなく、対照側耳管扁桃さらに口蓋扁桃や所属リンパ節経由で全身性粘膜免疫応答を惹起する事を明らかにする事が出来た。
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