当初動物実験により脳血行動態の単純モデルの定量化を目指したが、人を対象とした近赤外分光で測定される酸素化および脱酸素化ヘモグロビン量変化などの脳血行動態は、測定対象領域(通常頭表より半径3cm程度の領域)中の動静脈分布や血管の大小などに大きく依存する傾向が観測されたため、微細な脳血行動態の測定が重要である判断し、さらなる高分解能(1mm×1mm)ファンクショナルMRIにおいて賦活のあるなしを明確に知り得る撮像技術の確立を急いだ。 先ず、(1)ファンクショナルMRI画像における熱雑音、即ち極限的ノイズの大きさを定量化し、その強度を基に画像ノイズを評価する指標を確立した。このことで、従来測定対象毎に異なるノイズを統一的・絶対的に議論することが可能となり、かつ、アーチファクトノイズ低減の目標値を明確に定めた。また、(2)その指標を基にノイズの主な要因として考えられる体動・拍動・呼吸などの生理的揺動の影響を定量的に評価した。その結果、側頭部に押さえつける固定法により数分間の測定時間内で1mm以内のドリフトタイプの体動の影響が最大であることを数名の若年層ボランティアで確認し、さらに、体幹部もクロスベルトで固定すると体動低減の効果が大きいことも確認した。次いで、(3)位相を考慮した画像スペクトル分布を行い、生理的揺動による揺動の影響の大きな部位を抽出することに成功した。また、主要なノイズ源であるドリフトタイプの体動の影響を低減するため、短い刺激周期を用いた撮像法により指の運動の場合、各指毎の活性化領域を分離したファンクショナル画像を時間のかかる補正処理を行うことなく得ることができた。今後は、近赤外分光測定とファンクショナルMRIの同時測定系を確立し研究を進め目的を達成した。
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