脳血行動態が信号強度に反映する測定手段であるファンクショナルMRI(fMRI)と近赤外分光廁定(NIRS)を同時に行うことで、脳神経活動に伴う脳血行動態の解釈をより確実にすることを目的とた。まず、(1)微細な脳血行動態測定のための高空間分解能fMRIにおけるアーチファクトの低減を目指した。次いで(2)fMRIとNIRSの同時測定を行い、2つの異なる情報から脳血行動態の解釈を行った。 (1) fMRI画像における熱雑音強度を基に画像ノイズを評価する指標を確立した。この指標を基に、アーチファクトの主な要因として考えられる体動・拍動・呼吸などの生理的揺動の影響を定量的に評価した。その結果、撮像後の後処理で行われる動きの補正は画像空間分解能が粗いと不十分であり、十分な補正を行うためには1mmxlmm程度の空間分解能が必要であることが判明した。さらに、呼吸による影響は大部分が呼吸に連動した頭部の動きであることがわかり、不随意的な体動と共に動きの補正処理によりそれらの影響が低減することが確認された。 (2) MRI装置に複数のNIRS用プローブを装荷し同時測定を行い、手指対立運動による脳活性化を測定した。fMRIで描出されるBOLD効果を反映した領域はNIRSで測定されるデオキシヘモグロビン(deoxyHb)変化と対応している傾向が認められた。NIRS測定ではオキシヘモグロビンとdeoxyHbの変化はover compensation的変化を示す部位が顕著であったが、夫々の変化が現れる部位は多少ずれる傾向があり、動脈と静脈の分布の違いを反映している。さらに、脳神経活動に伴う脳血行動態のさらなる精密測定を行うためには、NIRSの3次元的把握(画像化)によりfMRIでの描出領域との対応解釈を進めていくことが求められる。
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