研究概要 |
(1)接触型熱刺激装置(工藤電機(株),NYT9002)とレーザー血流計(アドバンス,ALF-21)を組み合わせ、皮膚に熱刺激を与えた際に生じる直接性及び軸索反射性の血管拡張反応を同時計測するシステムを構築した。(2)透明アクリル樹脂を用いた一体成形型の加熱素子の素材はレーザー光を透過し、発熱体のある加熱面を損なわずに熱刺激部直下の直接性の血流変化が監視できる。(3)熱刺激に対する軸索反射性の血流反応は、熱刺激による直接的影響のない刺激中心から10mm離れた位置で測定を行う。(4)直接性の反応は平均値として41.0〜42.9℃で生じるのに対し、軸索反射性の反応は43.8〜44.8℃付近で生じ、軸索反射性の反応は直接性の反応に比べ温度閾値が高い。さらに、軸索反射性の反応は、灼熱痛閾値とほぼ一致する。(5)熱刺激前の平均血流量の20%の増加を血流反応の潜時とすると、直接性:6.4=2.5sec、軸索反射性:10.5±2.9secとなり、直接性の反応の方が速い(p<0.001)。(6)直接性・軸索反射性の両反応が生じる45℃刺激の場合の血流増加率は、直接性:938±585%、軸索反射性:645±611%となり、直接性の反応の方が大きい(p<0.001)。43℃刺激の場合は、それぞれ799±878%、641±1586%であった。刺激温度が高いほど血流反応は大きい。(7)直接性の血管拡張反応は、軸索反射性の反応に比べ温度閾値が有意に低く、1つの入力に対して感度の異なる2つのセンサがあるとみなせる。(8)直接性と軸索反射性の血流反応の特徴の違いから、2つの感度の異なるセンサの後に遅れ時間の異なるシステムが接続されているモデルを考えることができる。閾値が低く潜時の短い反応は、単純に熱刺激に対してのみ反応し痛みとは関係なく働くシステムであり、閾値が高く潜時の長い反応は痛み刺激(熱侵害刺激)に対して動作するシステムで血管拡張反応とさらに分岐して脳に痛みの信号を送るとみなせる。
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