研究概要 |
ヒトの顎運動制御メカニズムを解明するアプローチの一つに,ロボットで顎運動をシミュレートする方法がある,我々は,ヒトに近い解剖学的構造をもつ顎運動シニュレータの本体に咬筋,外側翼突筋,顎二腹筋アクチュエータを設置し,自律開閉口動作をシミュレートした.本年度の研究では,さらに側頭筋後部アクチュエータを追加し,自律開閉口動作を実現した.次に研究手順を示す:(1)側頭筋後部に相当する筋アクチュエータを製作した.駆動にはエンコーダ付きのDCサーボモータを用い,ワイヤ張力センサが組み込まれている.設計は,従来の筋アクチュエータと同様とした.(2)製作したアクチュエータを制御用コンピュータとインターフェイスを介してロボットに装着した.(3)開閉口運動時における側頭筋後部と外側翼突筋の活動について調べるため,実際に筋電図を測定した.(4)(3)の調査結果に基づき,アクチュエータの駆動信号を決定した.具体的には,従来,外側翼突筋アクチュエータが行っていた下顎頭の位置制御を側頭筋後部アクチュエータで行うようにした.一方,外側翼突筋アクチュエータは,閉口時に側頭筋に拮抗させ,下顎頭の前後的位置のインピーダンス調節を行うように変更した. 完成したシステムを用いて実験し,次の結果を得た.我々が開発した6自由度顎運動測定システムJKN/lを用いて運動を測定した結果,水平的下顎位は高い再現性を示し,より自然な自律開閉口運動を実現した.このことから,水平的下顎位は,側頭筋後部の位置制御と外側翼突筋の拮抗活動により制御されていることが明らかとなった.
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