平成10年度の計画は(1)ポリペプチドマトリックスの作製、(2)ポリペプチドマトリックスのコアセルベート特性および薬剤取り込み、(3)ポリペプチドマトリックス・コアセルベートの血小板凝集阻害の検討である。上記(1)、(2)および(3)については、ほ乳動物の生体高分子マトリックス・エラスチンの高ホモロジー領域に共通して存在するペンタペプチドGly-Val-Gly-Val-Pro繰り返し構造部分およびヘキサペプチドVal-Gly-Val-Ala-Pro-Gly繰り返し構造部分のそれぞれのポリマーを合成し、前者についてはポリマーの大きさとコアセルベート特性を検討し、後者についてはポリマーの大きさと血小板凝集阻害について検討した。その結果、Gly-Val-Gly-Val-Pro繰り返し構造部分については繰り返し回数が大きいほど、室温以下よりもさらに低温側でコアセルベーションが開始されることがわかった。一方Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly繰り返し構造部分については繰り返し回数が大きいほど、血小板凝集阻害能が大きいことが判明した。繰り返し回数(n)とIC_<50>との関係については次のような結果が得られた。Val-Gly-Val-Ala-Pro-GlyのIC_<50>:12.5mM、(Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly)_2のIC_<50>:5.80mM、(Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly)_3のIC50:3.56mM、(Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly)_<30>のIC_<50>:0.15mM。だたしIC_<50>とはコラーゲンによる血小板の最大凝集を50%阻害するのに必要なペプチドの濃度である。現在Gly-Val-Gly-Val-Pro繰り返し構造部分のポリマーのコアセルベートへの薬剤取り込みについては検討中である。ブロック型ポリペプチドについても検討中である。
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