研究概要 |
(1) 活性ケラチン水溶液の調製: 髪,羊毛の可溶化操作必要とする細胞毒性の低い界面活性剤を探したところ,長鎖脂肪酸ナトリウムやポリオキシエチレンドデシル硫酸ナトリウム(POEDSNa)なども有効であることを知った. (2) ケラチン蛋白質のrefoldingによる中間繊維,それらの集合体としての繊維,布,フィルムの再構成: 再構成繊維をは主に塩析剤濃度と温度を変化させて,ケラチンの再構成条件について研究した.すなわち,一般に蛋白質は当初は変則的な3次元構造であっても,無機塩添加による溶液イオン濃度の変化などの変化にともない,集合・脱集合を繰り返し最適な空間構造の中間繊維(IF)またはその束に再構成されるとの推定のもとづいて実験したところ,可溶化ケラチンは繊維状に再構成が可能なことがわかった.繊維の直径は約1-5ミクロンで光学顕微鏡で直視できるほど太い.ただし,再構成繊維のケラチンタンパク成分は原料ケラチン水溶液に含まれる8種以上のタンパク質の内,比較的にシステイン残基の少ない8%程度で分子量は4-6万の成分が必要であることを認めた. (3) 生化学的研究: ケラチンから再構成したフィルムにはL929繊維芽細胞が,コラーゲンフィルムに比べて,接着しやすく,増殖もよく進むことがわかった.ケラチンタンパク質が極性に富むこと,およびRGDアミノ酸配列に原因すると説明した.
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