組織中に含まれる含まれる細胞を刺激することにより、bFGFを含む内因性サイトカインを活性化することにより、血管新生を活発にし、治癒を促進するようにデザインしたハイブリッド人工血管の開発を計画した。動物実験にて皮下結合組織を細切し人工血管壁に内側から圧をかけ播種した試料を雑種成犬の腹部大動脈に植え込んだものを摘出し、標本の病理組織学的および免役組織学的検討を行った。また未分化の細胞を多数含む骨髄組織をePTFE人工血管壁に播種し採取した動物の皮下に植え込み試料を採取した。また組織片播種人工血管に自己心膜で一弁を付け肺動脈位に植え込んだ。また臨床からは先天性心疾患患者の手術標本を得、組織学的および免疫組織学的検討を行った。その結果、動物実験における早期植え込み試料では免疫組織学的にbFGFが強陽性に検出され、著しい血管新生が観察された。肺動脈位への植え込み実験では、組織片を播種したものでは弾性が優れており、外膜側の組織も生体の血管のように粗であることが観察された。臨床標本では繊維間隙を外膜側から侵入する毛細血管を観察した。今まで、ヒトでは治癒が遅延していて若い実験動物に比べて人工血管が内皮細胞により被覆されることはまれであるとされていたが、先天性心疾患の新生児(生後9日目)では血管新生も活発で、動脈硬化の進んだ成人とは治癒で大きく異なっていることが明らかになった。細切する材料としては皮下結合組織が一番身近であるが、他の材料も比較検討したい。
|