‘The Ontology of Many Worlds Modality and Time'(「多世界説の存在論…様相と時間」)という論文を作成し、カナダのマッギル大学のS.マコール教授のレビューを受けた。そしてそれをもとに当論文を改良したうえで、今年8月ボストンで開催される、哲学協会国際連盟主催による第20回世界哲学会議に投稿した。その結果、その「存在論(Ontology)」の部門で発表することが許可された。 当論文の梗概は以下のとおりである:「多世界説には二種類ある:一つは様相的多世界説であり、もう一つは時間的多世界説である。前者は実在世界が複数の可能世界(possible world)から成っていると考え、後者は複数の瞬間世界(momentary world or moment)から成っていると考える。 当論文では、特に貫世界同一性の概念に注目し、貫可能世界同一性と貫時点同一性を比較することによって、様相的多世界説と時間的多世界説の比較を行う。その最終目的は、多世界説の観点から時間を性格づけることである。というのも、筆者はそれが時間の実在性を把握する最良の方法の一つだと考えているからである。 まず最初に、様相と時間に関しては多世界説を採用する理由があることを示す;その理由とは、簡単に言えば、貫世界同一性は空間に関しては無意味なのにその両者に関しては有意味であるということである。その点において、時間は空間よりも様相に近いのである。次に、しかしながら貫時点同一性は実在性に関して貫可能世界同一性と異なること、すなわち前者は実在的関係であるのに対し、後者はそうでない事を主張する。かくして筆者は、貫時点同一性の関係に時間の実在性を見出すことになる。このような見方は、空間には当てはまらないような意味で時間に実在性を認めるという長所を持っている。」
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