研究概要 |
二年計画の初年度としては,研究対象となる主要な文献類の収集、データベース構築へ向けて関連テキストデータの入力・その分析が主たる内容であった。特に『瑜伽師地論(Yogacarabhumi)』の「菩薩地」(Bodhisattvabhumi)、「声聞地」(Sravakabhumi)をはじめとする一次資料・註釈書類を中心として,さらに国内外の研究論文・翻訳等についても可能な限り収集した。一次資料の検討に関しては、最近刊行された『瑜伽師地論』の詳細な索引・CD-ROM版大蔵経も最大限に活用し、実践論形成の構造的解明に向けての分析を試みてきた。とりわけ、従来の問題点として注目してきた初期瑜伽行派における所縁観に関して、詳細な検討を進めることができた。また、有部系論書に見られる実践の体系と初期瑜伽行派の実践論とに見られる類似性は多くの研究者によって指摘されているが、報告者としてはさらに網羅的かつ独自の視点にを加えて考察を進めたつもりである。初年度の段階では、その作業の途上であるが、その考察に当たっては、A.Wayman博士の諸論文から多くの示唆を得ることができた。 また、海外の研究成果の収集のため、米国学位論文の複写サービスを利用し,過去二十年くらいまで遡って初期瑜伽行派の実践論を扱った博士号取得論文を検索し、該当する二十篇ほどを入手できたことは、この研究を進めていくにあたって非常に有益であった。とくに未刊行である『瑜伽師地論』の部分的な校訂テキストや英訳は参考に資するところが大きかった。しかし、その一方では不備な点が散見されたことも否めなかった。引き続き、今年度に収集したテキストの体系的構造的な解析を進めるとともに、関連テーマのデータベース構築を図り、その成果を実りあるものとしたい。
|