本研究の目的は、19世紀後半のハプスブルク帝国史と、その社会が生んだウィンナ・オペレッタという音楽劇との相関を明らかにすることにあった。 本年度は、本研究の対象となるいわゆるウィンナ・オペレッタの諸作品のうちでも、特にハンガリーを舞台とした一連の作品群、すなわち「ジプシー男爵」「ジプシーの恋」「チャールダーシュの女王」などについて、これまでに入手したものに加え、引き続き文献や音響資料の収集につとめ、それらを整理した。ハプスブルク史研究についても、文献を補充し、検討した。 また、平成9年12月18日〜31日には、ウィーン、ブダペスト、およびクル-ジ・ナポカに出張し、現地でのレビューをうけた。特に、今回カ-ルパーティ教授の紹介によって知り合ったブダペストの研究者、アンドラ-シュ・バッタ博士(リスト音楽院講師)からは、東欧におけるオペレッタ研究の現状について様々な新しい知見を得ることができた。彼から得た情報に基づき、来年度はさらにもう少し対象となる作品を広げて資料の収集整理にあたりたいと思う。さらに、上記諸作品の作者達について、これまでの研究を検討し、整理しているところである。 これらの研究から、今年度はごく短いものながら、研究全体のエッセンスともいえるような文章を一篇発表することができた。
|