本研究の目的は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのハプスブルク帝国史と、その社会が生んだウィンナ・オペレッタという音楽劇との相関を明らかにすることにあった。前年度に行った現地でのレビューなどの成果を踏まえ、今年度は下記の点について研究を行った。 (1) 先行研究の整理:前年度に引き続き、これまでのオペレッタ研究、あるいは個々の作品の研究などを整理した。とりわけ昨年度に行ったハンガリー、オーストリアでのレビューの際に紹介された文献、資料についてその整理を重点的に行った。 (2) 資料収集:各作品の脚本や舞台資料、あるいは初演や重要な上演の新聞批評などを、各研究拠点に連絡をとり、収集につとめた。 (3) 作曲家、脚本家、演者たちの伝記研究の再検討:このジャンルを支えた作曲家、脚本家たちはそれぞれ帝国内部の民族的緊張を体現する者たちでもあった。このような観点から、既に刊行されている作曲家たちの伝記を再検討した。 (4) 上記の諸点を踏まえ、脚本、音楽、演出の各観点から、主要作品の分析を進めた。特に《ジプシーの恋》(1910年初演、F.レハール作曲、A.M.ヴィルナーおよびR.ボダンツキー台本)については、本研究の成果として、モノグラフをまとめる予定である。
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