研究計画では本年度はデータベースの構築に主眼をおく計画であった。図像的なデータについては計画通り着実に収集され、その結果、本来次年度に計画されていた個別の作品に関する分析作業も一部実施され、予想外の成果を上げることができた。 本年度の最も大きな実績としてはこれまで十王地獄図とみなされてきた高達本が実は中国における水陸画の図像集であったことを解明されたことが挙げられよう。この実績は学会において口頭発表された後、論文化されて学術雑誌上での発表を終えている。この解明にあたっては関連絵画作品に関する中国図書の補助金による集中的購入が大きく寄与した。 また、日本に将来された関連作品については、写真資料の収集と実地における調査がなされた。この調査作業の過程で、新知恩院本六道絵が水陸画であることもほぼ明らかとなり、来年度には論文としてまとめ得る状況に至った。この作業については補助金によって購入した写真機材や支給された旅費が不可欠であったし、外部の研究機関からの資料写真調達も補助金によって有効に行われた。 なお、申請した予算額よりも減額されて補助金が支給された都合上、図書の購入や資料の収集の一部に支障をきたし具体的には道教経典関連の資料収集が十分でなかったことが惜しまれる。この問題は次年度において解消できるよう、補助金支給額の算定について配慮を求めたい。
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