コントラスト変調順応法とは、3次元色空間内のある色度点を中心に色コントラストを時間的に変調させ、その変調に対する順応の前後での色覚システムの感度の変化を検討する方法である。この方法によって、大脳皮質以降の中枢レベルにおける二次・高次の色覚システムの存在が明らかにされつつある。本研究は、こうした二次・高次の色覚システムの特性の検討を通じて、色覚のメカニズムを心理物理学的に明らかにしていくことを目的としている。 本研究の目的を達成するためには、刺激の色度、輝度、空間周波数、時間周波数を厳密かつ組織的に変化させうる刺激提示システムを構築する必要があった。このため、本年度はまず、コンピュータ・ディスプレイ・システムを中核とした刺激提示システムを構築した。コンピュータにはビデオカードが搭載されており、高い色解像度および空間解像度での刺激提示が可能となった。また、このシステムでは、ハロゲン光源により作成される高強度の定常順応光とコンピューター・ディスプレイ上に提示された刺激を、ハーフミラーによって重ね合わせられるようになっている。これにより、研究の基礎になる色空間内における3錐体の軸の位置を、各観察者について決定することが可能となった。また、定常順応光は、二次・高次システムの色順応特性の検討においても使用される。 刺激提示システムの構築にあっては、高色解像度の実現の際にビデオカードのインターフェースに関する技術上の問題などに直面し、その解決に時間を必要とした。このため、研究は当初の計画よりも遅れぎみであるが、現在は、コントラスト変調に対する順応の前後において、閾値付近から閾上の強度にわたる色の見えがどのように変化するかを色名法を用いて検討するため、予備実験を進めているところである。
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