研究概要 |
日本語における日常概念の獲得過程を再現するような,本格的はニューラルネットワーク・モデルを構築する,というのが本プロジェクトの最終目標である。本年度は,2年にわたる研究計画の1年目であるため,シミュレーション・モデル構築に要するハードウェア,ソフトウェア等の研究開発環境の整備や,モデルの動作と比較対照させる人間の心理学実験データの蓄積が作業の中心になった。 第一に,本年度の研究費で購入した2台のコンピュータを,インターネットに接続されたUNIXワークステーションとして整備し,モデルのプロトタイプ構築に用いるニュートラルネットワーク・シミュレータであるPDP++およびTlearn,モデルが処理する概念表現の定式化に用いる電子化辞書EDRをインストールした。PDP++およびTlearnについては,日本語概念獲得モデルのミニチュア版の試作を行った。中でもPDP++は,当面の目標であるSt.John and McClelland(1990)による文ゲシュタルトモデルの実装に十分な汎用性を持っていることが確認された。電子化辞書EDRについては,付属の日本語コーパスや,日本語形態素解析ソフトであるchasenと併用して,現実場面で用いられた大量の日本語文データを,ネットワークモデルに適した分散的概念表現へと変換・抽出する方法について検討を進めた(未完成であるが,研究の一端は1998年度の日本心理学会総会等で発表の予定)。 第二に,モデルの動作と対照される人間の心理学データについては,最終的な学習パラダイムとして有用な,比較に基づく学習(Spalding and Ross,1994)に関して,言語学習にとっても重要な属性間相関の補完現象の生起条件と限界について検証する心理学実験を行い,その成果を1997年度の日本心理学会総会で発表した。
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