本研究では、日本とスウェーデンの精神分裂病患者の時間評価と再生の特徴を心理物理学的実験で明らかにすることを試みた。具体的な実験方法は次の通り。 刺激は白色雑音で、呈示時間は1.3〜20.0秒の10種類であった。刺激生成と実験制御はパーソナル・コンピューターで行った。実験に関する教示後、被験者がコンピューターのキ-を押すと実験が開始した。毎試行、10種類の呈示時間のいずれかで白色雑音が呈示された。時間再生課題では、刺激呈示終了から0.3秒後に白色雑音が再呈示された。そして被験者が刺激の呈示時間と主観的に同じ時間が経過したと判断したときにキ-を押した。すると白色雑音が停止し、その持続時間が再生時間としてコンピューターに記録された。時間評価課題では、刺激呈示後、被験者はその呈示時間の主観的長さを常用時間単位(小数点以下の秒数も含む)で答え、それを実験者がコンピューターに記録した。時間再生、時間評価課題共に10種類の刺激持続時間がランダムに3回ずつ呈示された(計60試行)。 本年度は、日本の精神分裂病患者を対象としてデータを収集した。被験者は専門医により精神分裂病と判定された患者11名であった。11名中2名が時間評価と再生を行い、8名が時間評価のみ、1名が時間再生のみを行った。結果にばらつきが多いものの、時間評価課題を行った10名中6名が刺激時間の明らかな過大評価を示し、2名が明らかな過小評価、2名が比較的正確な評価を示した。また、再生課題を行った3名とも比較的正確な再生結果を示した(詳細は村田他、1998)。 次年度では、日本で精神分裂病患者と健常者のデータを継続して収集するとともに、スウェーデンでも同じ実験を行い、両国の結果を比較する予定である。 引用文献 村田雅彦・岡部彰人・斎藤治・森周司・谷野亮爾・Hammes Eisler(1998)慢性分裂病患者に対する薬物療法効果判定における精神機能評価の意義:非定型抗精神病薬リスペリドンの効果.第139回北陸精神神経学会、1月25日、金沢.
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