研究概要 |
ヒトの視覚情報処理系において,外界において遮蔽されて不可視な領域がどのように処理され,どのような表象が形成されているかは未解決のままである。また、そのような視覚機能が発達的にどのように変化しているのかについても全く解明はされていない. そこで,発達的見地と計算論的見地から,3次元立体の遮蔽された不可視領域に関する視覚的情報処理を乳幼児と成人とを被験者とした精神物理学的実験によって検討し,発達的見地および生態光学的観点を含めた計算理論を横築することを試みている. 本年度は,実験刺激として,21インチサイズの大型ディスプレイに2次元線画図形を呈示し,遮蔽された部分に関わると考えられる領域において光点検出になんらかの違いがないかを,成人を被験者として検討している.その結果輪郭線が交差している図形領域付近で,遮蔽される輪郭が手前の物体の向うで延長しているという考えられやすい部分において,違いがありそうなことがわかった.今後は,現在得られているデータの解析をすすめ,より明確な結果を得ることができる刺激条件を探し,定量化を試みる.また,より多数の被験者を用いて,見えの質的差異についても他の結果と比較が可能なデータを収集していく. さらに来年度は,両眼視差による奥行き感を含む刺激図形を用いて遮蔽の事態をシミュレートし,刺激中における光点検出に違いが生じる条件を検討する.また,これら成人の実験データを整理し,これまでの乳幼児の遮蔽知覚の知見と比較検討を行う。この比較から乳幼児が遂行可能でかつ遮蔽知覚に関する知見を得ることができる実験を提案していく.
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