研究概要 |
運動対象間の相互作用の空間的なスケールを,確率的ランダムドッドキネマトグラム(S-RDK;フレーム間で同一方向に一定距離移動するシグナルドットとランダムな方向へ移動するイノズドットから構成されるキネマトグラム)を用いて測定し,相互作用を媒介する機構の特性を検討した.まず,シグナルドット率の異なるS-RDKで構成される複数の領域が,単一の領域として知覚される刺激の大きさを求め,空間的統合が生じる範囲の指標(critical size)とした.次に,criticalsizeのテスト刺激に対して,その周辺に呈示される誘導刺激が及ぼす影響を測定し,critical sizeよりも大きなスケールで生じる誘導効果の特性を明らかにした.その結果,critical sizeはS-RDKのフレーム数・呈示時間・移動距離によって変化すること,テスト刺激の見かけの運動方向に対する誘導刺激の影響は,critical sizeを越えた範囲でも生じること,またこの影響は刺激呈示時間・ドットの移動距離・フレーム数によって促進的な場合と抑制的な場合があることが示された.これらの結果から,運動情報の空間的相互作用を媒介する機構の受容野構造を解析した.
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