スクールカウンセリングなど学校臨床実践の基礎研究は我が国で数少なく、特に学級への介入に基盤を与える臨床心理学的な学級研究は不足している。学級には集団としての心理社会的な個性、即ち学級風土が存在し、学級介入には学級風土査定が欠かせない。そこで本研究では、米国の主力な質問紙Classroom Environmet Scale(CES)等と、学級観察等から帰納的に得た独自の質問項目を基に、我が国の教育現場に適した学級風土アセスメント質問紙の開発を行った。平成9年度は、作成した質問紙を北海道・九州地方の2中学校12学級で実施し、担任教師等へのフィードバックを行った(研究1)。その結果、質問紙には学級風土が反映され、不登校発生の予測等に有効なことが示唆された。次に、研究1を基に改良した質問紙を多数の学級(北海道・関東・四国地方の21中学校計85学級有効回答数2465名)に実施し、学級単位の数量的分析による質問紙整備を行った(研究2:分析継続中)。さらに、平成10年度には探索的な介入研究として、北海道・関東地方の3中学校計16学級を対象に、研究2で作成した質問紙を1学期と2学期に計2回実施し(研究3)、各風土の1・2学期での変化を検討し、教師コンサルテーションを行った。その結果、各学級の個別具体的な実態が質問紙から得られ、教師間で学級経営が見直され、新年度の学級編成に向けた留意点が発見される等、実践的効果が得られた。以上本研究では、従来の質問紙に無い次の特徴を持つ質問紙を作成できた。即ち(1)学級の個別具体的な情報を個性記述的に抽出できる。(2)学級風土査定における「分析単位問題」に配慮した学級単位の分析によって尺度構成されている。(3)教師の抵抗感が配慮され、教師にも有用な情報が得られる。また本研究で得た質問紙による学級の個別具体的な情報は、実践的介入に有効だった。今後は、質問紙の完成と公刊、介入研究の継続による介入方法のモデル化等が課題である。
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