研究概要 |
本研究の目的は、思春期前期(中学1,2年生)の身体的発達のタイミングが思春期中期・後期(中学3年生から高校生以上)における心理的適応度に及ぼす影響を検討することである。平成10年度には、平成6,7年度に実施した調査の対象であった中学生のうち、住所が確定している卒業生430名と在校生179名を対象に、平成9年度に引き続いて第2回目の質問紙調査を実施した。卒業生に対しては郵送で、在校生に対しては学校で調査を実施した。 平成10年度に実施した主な調査項目は、自己価値観(10項目)、問題行動評定(24項目)、親の養育態度(24項目)、摂食障害傾向(26項目)などである。問題行動評定は因子分析により、学校生活・規則違反に関する項目と暴力・攻撃的行動に関する項目の2因子が抽出され、それぞれを下位尺度として以降の解析に用いた。各尺度の内的整合性(α係数)は0.78以上であった。 横断的解析の結果、問題行動については本人の自己価値観および親の養育態度との関連がみられ、両親いずれに関しても過保護でも過干渉でもなく放任的な親の態度と特に攻撃的な問題行動との間に有意な関連がみられた。また、問題行動を多く報告している生徒は自己価値観が低く、抑うつ的であることもわかった。さらに、女子においては同級生と比べて発達タイミングが早い生徒、男子においては遅い生徒の心理的適応度が低い傾向がみられたが、身体的な発達タイミングとそのほかの関連因子(親子関係、自己価値観など)の相対的な影響力については現在解析中である。(本研究の結果の一部は1999年7月に行われる日本カウンセリング学会にて発表の予定である。)
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