親子関係において、キ-となる心理的な概念は「愛着」である。本研究では、親自身の生育家庭での愛着経験が、自分の子どもとの愛着関係にどのような影響を及ぼすのか、という観点を中心に行われている。また、愛着経験は、親子関係だけを規定するものではなく、親密な人間関係を作っている内的作業モデルとなりうることも想定し、夫婦関係や家族関係の現況を把握し、それらが親子関係のあり方とどのように関連しているのかを探求することも目的である。 本年度の進行予定として、(1)2・3歳を中心とする子を持つ家族を50組募り、母親には成人愛着面接インタビュー(アダルトアタッチメントインタビュー)と質問紙のセット、子どもには家庭訪問における研究者による観察でアタッチメントQソ-ト法による愛着測定、さらに、父親には質問紙のセットを遂行してもらい、データを集めることであった。現在の時点で、約半数近い家庭とコンタクトがとれており、データが集まりつつある。テープレコーダーは成人愛着面接インタビューに使用し、そのテープを起こすためにトランスクライバーを用いている。また、それらの入力やデータの点数化と数値化のために、コンピューターを使用している。さらに、このデータ収集のためには、二人がペアとなって家庭を2度訪問しなければならないため、研究助手にはそのような手続きもふんでもらっているため、謝金の使用となっている。 現在の中間報告では、アダルトアタッチメントインタビューで収集された親の語り方が、子どもの方の行動パターンと比較的一致しており、表象レベルにおける愛着の内的モデルが世代間伝達されているようである。
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