本研究では、判断と意思決定の状況依存性を実証的に解明し、状況依存性を理論的観点から説明し、予測可能な心理計量モデルの作成とその妥当性研究を行なうことを主目的とした。まず、第1の研究目的は、判断と意思決定の状況依存性が生じるのは、どのような状況なのかを明らかにすることであった。すなわち、状況要因の探索と分析を行うことである。この研究目的の達成のために、質問紙調査を行い、そのデータを種々の多変量解析を用いることによって、状況要因の抽出を行い、状況の構造を明らかにした。第2の研究目的は、状況依存的な判断と意思決定において、どのような心理的プロセスが生じるのかを明らかにすることであった。この目的の達成のために、情報モニタリング法やプロトコール法などの過程追跡技法を用いる実験を行うことによって、状況依存的な判断と意思決定において、どのような心理的プロセスが生じるのかを明らかにした。最後に、第3の研究目的は、これまでに得られた知見をもとに、判断と意思決定の状況依存性を説明する心理計量モデルを作成することであった。状況依存性を説明するモデルとして「心的モノサシ理論」を提案し、その定性的表現、集合論に基づく数理的表現、心理計量モデルの提案を行った。さらに、新たに調査と実験を行い、心理計量モデルのパラメータの推定を行った。これらの研究結果の一部は、報告書に掲載されているいくつかの学術雑誌に発表した他、国内外の学会大会やセミナーにおいても発表された。
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