本研究は、教員特有のストレスとその軽減方法を明らかにすることを目的とし2つの検討を行った。 【研究1】「ストレスの評価法等に関する研究」(1994、労働省作業関連疾患対策研究)で実施した調査を教員を対象として新たに実施し、両者の結果を比較することによって教員特有のストレス状況を検討した。一般事務職と営業・販売職を抽出し教員群と比較した結果、ライフイベントや日常のストレスには有意な差は認められないが、対処行動においては「問題中心の対処行動」が教員は有意に高く、同様に「ソーシャルサポート」も有意に多いことが示された。一方、行動的反応では「時間的余裕のなさ」と「早急さ」が、心理的反応では「対人的な緊張感」が、身体的症状では「疲労感」と「その他の自律神経症状」が教員は高いことが示された。今回の調査では、各サンプルの全体の年齢は統制できたが、各サンプル構成の統制がやや不十分なところもあった。しかし、この結果は、教員という職種の特徴を十分描き出しているものと思われた。 【研究2】教員を対象にストレス尺度やソーシャル・サポート、バーンアウト尺度とともに対処行動の調査を行った。対処行動については、ストレス尺度を構成する各因子(職員との関係、煩雑感、多忙、児童・生徒との関係、評価懸念、部活動、校務分掌、保護者からの評価、問題行動)によって用いられる対処行動に違いがあることが示されたとともに、それぞれのストレス事態に用いられる代表的な方略を抽出することが出来た。これは、研究1の結果も踏まえるのならば、教員のストレスを軽減させるための対処行動を検討していく場合、個々の対処行動が、どのようなストレス場面で実際にどの程度用いられ、どの程度有効であるかを、ストレス事態毎に評価し、その上でストレスの軽減法として有効な方略を検討していくことが必要であることを示唆しているものと思われた。
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