研究概要 |
ある社会集団やその集団成員に関する,われわれ個人の知覚や推測・表現が、言語・非言語のコミュニケーションを通して、他者に伝達され、共有される過程を検討するための足がかりになる2つの実験を行なった.2つの実験では,それぞれ100名の被験者が、第1世代群,第2世代群,統制群に無作為配置させた.第1世代と統制群の被験者は、ある特性・特徴の次元(能力や向性など)に関する個々の集団成員の記述情報に接触して,その集団に所属する別の成員(系統的に記述情報の次元上の値を操作)の典型性を判断した.第1世代は,この判断に先立って,第2世代に伝達するために,接触情報を再生した.第2世代は,その再生情報に接触した後で典型制判断を行なった.記述情報は,第1実験では,ある能力のテスト得点,第2実験では,予備調査によって尺度化された向性に関する記述文であり,その値の変動性(多様性)が高い条件と低い条件が設定されていた.2つの実験の反応潜時などの指標で繰り返し確認されたことは,第1世代は,成員の変動性の高低に対して反応的であったが,第2世代と統制群ではその反応性が消失したことである.これらの結果は,情報の伝達過程における再生が,集団の成員の多様性に関する暗黙の情報の伝達を阻害し,集団に対する後続世代でのステレオタイプや偏見の助長に貢献することを示唆していた.
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