暴力的なテレビゲーム使用が、(a)その後の攻撃行動に影響するか、(b)その影響を調整する変数は何か、(c)その影響を媒介する過程は何かを検討するために、テレビゲームの選定を行い、選定されたテレビゲームを使って1つの実験を行った。実験では、お茶の水女子大学の学生52名を5つの条件の1つにランダムに割り当てた。それらの条件は、(1)被験者が現実的なゲーム(ヴァーチュアコップ)で遊ぶ条件、(2)非現実的なゲーム(スペースインベ-ダ)で遊ぶ条件、(3)現実的なゲームの進行をただ見る条件、(4)非現実的なゲームの進行をただ見る条件、(5)中立的な映像(森のシンフォニ-、赤毛のアン)を見る対照条件、であった。被験者には、ゲームや映像に接触した後で、サクラに対して電気ショックを与える機会が与えられた。そこで被験者が与えた電気ショックの強さと長さが、攻撃行動の測度として用いられた。また、被験者の血圧や心拍を、ゲームや映像に接触する前後で測定した。こうしたデータを分析した結果は、以下の通りであった。(a)ゲーム遊びをした条件、とくに、非現実的なゲームで遊んだ条件では、対照条件よりも、サクラに与えられた電気ショックが長かった。(b)ゲームで遊んだ条件では、ゲームをただ見た条件よりも、電気ショックが強く、かつ、長かった。(c)これらの結果は、血圧や心拍による媒介効果を除去したときでも変化しなかった。こうした知見は、暴力的なテレビゲームの使用が、人間の攻撃性を増大させること、また、この増大の過程が、暴力的な映像の視聴や生理的喚起によって媒介されるものではないことを示唆している。
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