研究概要 |
本研究の目的は,自己の知識を外化するダイアグラム機能を用いることで,自己説明活動をとおした概念的理解を向上させることができるか,その効果を検討することであった。参加者は,まず「記憶のシステム」について自己の理解を口頭で報告し,その内容を実験以前の各参加者の理解とした。さらに「記憶システム」の講義内容をテープで聴講し,さらに配付された資料にメモをとることによって,自己説明活動の補助として用いた。統制群(大学生4名)は,記録したメモをもとに,学習した内容が自己の知識とどうかかわり,さらに理解を深めるためにどのような情報が必要かを考える自己説明活動を展開し,別の用紙に自己の知識を整理した。実験群(大学生4名)はメモをもとに作文支援システムのダイアグラム機能を用いて自己説明活動を展開した。最後に,再度記憶システムについての理解を口頭で報告させ,さらに記憶の自由再生の実験内容を説明し,その結果を予測させ,その解答の正確さを実験後の理解度の指標として用いた。口頭報告の分析の結果,記憶のメカニズムの異なる機能間の関係に言及する推論活動が,実験群においてより頻繁にみられ,さらに事後テストにおける概念的理解のレベルも統制群より有意に高かった。新たなメディアとして,ダイアグラムが時間的,内容的に分割された情報の間の関係を考慮する際の補助として用いられるだけでなく,さらには知識を構築するという活動をビジュアルに意識させることができることで,自己説明活動を大きく促進させることがわかった。
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