研究者が過去に行った研究では、ストレッサからストレスが生じ、それが累積してバーンアウトが生じるという因果モデルを検証した。これは、従来のバーンアウト研究の基本的な枠組みとなってきた因果図式であり、バーンアウトはストレスの結果生じるストレンのひとつであるとする考え方である。しかし、結果は、必ずしもこの因果モデルに斉合するものではなかった。特に、バーンアウトの三つの側面のうち、個人的達成感は、心身症状との関連が低く、ストレッサにより説明される部分は、他の二つの側面に比べて、極端に低い数値を示した。そこで、今回の研究では、まず、従来の因果モデルを再度検証する目的で、看護婦が日常業務で経験すると思われるストレッサとバーンアウト得点と関連を調べた。その結果、前回同様に、情緒的消耗感と脱人格化については、ストレッサとの関連が認められたが、個人的達成感については、ストレッサとの関連は認められなかった。そこで、あらたに自己効力感という要因を加えて、ストレスと自己効力感によるバーンアウトの因果モデルを提議し、その妥当性を検証した。共分散構造分析(EQSモデル)による検証の結果、本研究で提議した因果モデルの適合度は高く、その妥当性が支持された。すなわち、ストレスの結果生じるのは、バーンアウトの3側面のうち情緒的消耗感と脱人格化の2側面であり、個人的達成感の後退は、ストレスの結果生じるのではなく、自己効力感の喪失と密接に関わっていることが確かめられた。 今後、ヒューマン・サービスの需要は、急速に拡大していくであろう。ヒューマン・サービス従事者の安定的な確保は、社会にとって急務の課題である。バーンアウトが発症するプロセスについてあらたな経路を示唆した本研究の意義は大きい。
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