これは、2カ年研究の中間研究報告の概要である。被験者64名(留学経験のない日本人大学生)について、英語総合能力を測るため、1.読解力、2.聴解力、3.語彙力、4.綴り能力、5・単語処理時間、6・英語言語特徴に関する知識の6つの分野について、データ収集を行った。各要素の相関分析の結果、読解力は聴解力(R^2=51;P<.001)、単語処理時間R^2=-.29;P<.05)、語彙力(R^2=.40;P<.01)、綴り能力(R^2=.38;P<.01)と、それぞれ有意な相関関係があることが明らかになった。また、聴解力は語彙力(R^2=.45;P<.001)と綴り能力(R^2=.43;P<.001)の2つの要素と、そして、語彙力は単語処理時間(R^2=-.46;P<.001)、英語言語特徴に関する知識(R^2=.37;P<.01)、綴り能力(R^2=.55;P<.001)の3つの要素と有意な相関関係があった。さらに、重回帰分析を行った結果、読解力の25%は聴解力から予測が可能であり、聴解力の20%は語彙力と関係があることが明らかになった。これらの結果は、より英語力の高い学習者(カナダの大学院で学んでいる日本人、中国人、イラン人)を対象にした先行研究の結果とは、著しく異なっていた。つまり、高い英語力を持つ学習者の読解力は、語彙力、綴り能力、単語処理時間、英語言語特徴に関する知識の4つの要素と有意な相関関係があったが、かれらの読解力を有意に予測できる要素は英語言語特徴に関する知識(19%)、単語処理能力(9%)、語桑力(4%)であった。このような、英語力と読解力を構成する要素の関係についてさらに詳しく考察するために、本研究はさらにデータを収集する予定である。
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