本研究の目的は、教師による実践的思考としての教育評価の実態を明らかにするとともに、それを理論化することである。第1年次の本年度は、教育評価論の構造について文献研究やヒアリングを通じて考察するとともに、予備的な調査を行った。 まず、教育評価論の構造に関する分析であるが、評価概念は評定論、教育評価論、反評価論に大別されることや、教育評価論がさらに目標達成型と目標生成型に区別されることなど、従来、教育心理学であまり問題にされてこなかった概念整理を試みた。その結果、目標生成型の教育評価論を基盤として「教師による実践的思考としての教育評価」を主に位置づけるべきであることが明らかになった。 また、「教師による実践的思考としての教育評価」の実相を明らかにするための予備調査を行った。まず、小学校の授業を観察し、記録するとともに、それを教師と共同で分析することを通して、実践的思考としての教育評価を記述する記録フォーマットを開発した。また、小学校教師の授業を観察するとともに、授業をビデオテープに録画し、授業終了直後にビデオを再生しながら研究者と授業者が共同で授業リフレクションを行った。その結果、同一教師でも教科によって「実践的思考としての教育評価」のあり方が異なることなどが明らかになった。 次年度は、調査を進めることを通して、実践的思考としての教育評価についての理論化を行う。
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