本研究では、教育評価を授業過程において現在進行形で生起する教師の暗黙知に支えられた即興的、状況的、創造的な思考として捉え、その教師による実践的思考としての教育評価の実態を明らかにするとともに、それを理論化することを目的とした。特に、指導と評価の一体化を教師が授業過程で反省的実践として行う営為であると捉え、それを記述する方法を開発するとともに、その実践的思考を支える教師の教育観、子ども観、教科観との関連を考察することを通して、教育評価の実践や研究に対して新たな視点を提供することが目指された。 具体的には、授業を観察し、その後、共同で授業リフレクションを行うことを通して、授業内に埋め込まれた教師の思考としての教育評価の実像を検討するとともに、その実相を授業内容に即してリフレクションすることを支援するツールとしての「リフレクションシート」を開発した。「リフレクションシート」とは、教科のねらいと指導・学習計画(「はじめに考えたこと」)、授業中の評価・みとり(「みとったこと」)、授業中の授業設計・学習計画の変更(「考え直したこと」)及び授業中の実行(「やったこと」)の欄が互いに対応する形式で設けられ、リフレクションの過程で書き入れていくツールである。 以上の検討を通して、同一教師でも教科によって「実践的思考としての教育評価」のあり方が異なることや、教育観、子ども観、教科観などが評価の思考サイクルの質を規定することなど明らかになった。教育評価を授業に埋め込まれた実践的思考として位置づけることの意義や有効性が確認されたと言えるだろう。
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