研究概要 |
本研究ではまず文献レビューをおこなった。アメリカではネガティブな政治広告の効果についての研究が数多くおこなわれているが,その結果は必ずしも一貫していなかった。 本研究の主要な目的は,実験によりネガティブな政治広告の効果,中でも認知的な効果を検証することである。研究においては,自民党をスポンサーと仮定し,自党のよさを主張するポジティブな広告と新進党に対して非難をおこなうネガティブな広告をできるだけ類似のコンセプトと映像パターンをもつように作成した。そして,既存の選挙制度についてのニュースフィルムを編集し,その合間に今回作成したポジティブな政治広告とネガティブな政治広告およびその他の商品広告を含め,全体で10分程度の映像を作成した。被験者は大学生97名。新しい選挙制度に関する調査という名目で作成した映像に接してもらい,その後にいくつかの質問に回答をしてもらった。認知的な効果としては,主として広告の印象度について測定をおこなった。結果は,印象度については,繰り返しのあるt検定をおこなったところ,新進党に対するネガティブ広告の印象度が高いという結果が得られた。政治的洗練度による差を検討するために,政治的関心の高低別に分析をおこなったが,関心の低い人に印象的であるという一貫した結果は得られなかった。今回の実験では,具体的な視聴状況に近づける点を優先させたデザインや測定をおこなったが,今後はより厳密な測定やデザインを考慮した実験をおこなう必要がある。
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