初年度は「色グラデーション帯」尺度の作成、及びスクリーン投影による呈示法確立のための予備的作業を試みた。萌芽的な集団間関係を実験室内で実現する方法に最小条件集団状況と呼ばれるものがあるが、この予備作業ではそれに準じた集団実験状況において被験者二十数名の参加を得て問題が検討された。購入したプロジェクター(EPSON ELP-3500)を屋内の通常の教室で点灯の上呈示したのでは十分な呈示が得られないことが分かったため、黒色カーテンを閉めた上で一部点灯し、明るさ最大、コントラストその他は中の設定で、スクリーン面から5.5m、床面から1.25mの位置より刺激を呈示した。刺激はラップトップパソコンのスライド呈示用ソフトで色相・光度等を数値統制したものを作成し、それをプロジェクターに接続してスクリーンに呈示した。被験者はプロジェクター本体とスクリーンの間に着席し、刺激に関する一連の評定を行った。 じゃんけんを用いた集団分け操作の後、被験者は3種の教示((1)分割比率の美しさ、(2)集団イメージ、(3)色強調)のもとで、(1)白色帝、(2)赤のグラデーション帯、(3)赤と青が両端にあり中間が白色となったグラデーション帯、の3種の刺激に対して判断をおこなった。全て被験者内要因計画を用いた。教示(3)の下で回答のバラツキが相対的に大きく、また特に教示(2)と(3)の下で所属集団による判断の差がみられるなど、興味深いデータが得られた。 次年度は初年度に作成した実験刺激を用いて、実際に最小条件集団状況での集団間における評価・行動に加えて、対集団差別における自動的成分の測定をおこなった。通常の最小条件集団実験のなかに、色グラデーション帯による集団間分化の測定を組み込み、さらに自動的成分の検出に有効と考えられる「注意の撹乱」操作のあるなしを実験計画に盛り込んだ。統制条件と実験条件それぞれに二十名ずつの被験者の参加を得た。結果の詳細は学会などで発表される予定である。
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