本研究は、先行課題により評定者の特定の性格特性概念を活性化する手続きを用いて、さまざまな条件でこの手続きの効果を検討する研究の1年目である。これによって、行動を性格特性概念で分類するまでの認知過程の中で、評定者側の要因と被評定者側の要因の役割を検討することを目的とする。次の3つを手がかりとしたパーソナリティ判断で効果を比較する。(1)行動の抽象的な言語的記述(抽象的言語条件)、(2)行動の具体的な言語記述(具体的言語条件)、(3)ビデオによる行動観察(ビデオ条件)。先行課題の効果は抽象的言語条件で大きく、実際場面に近いパーソナリティ判断の場合(具体的言語条件、ビデオ条件)では小さくなることが予想される。 本年度は、準備と抽象的言語条件の実験を行い、つぎのような成果を得た。 1.評定尺度の作成:評定に用いるパーソナリティ表現語を選択、評定尺度を作成した。各パーソナリティ表現語の社会的望ましさを測定した。 2.被評定者の行動の記述の作成:1)ターゲットとなる二つの性格特性を4種類選定し、2)ターゲットとなる性格特性について、行動の具体的な記述とやや抽象的な記述の2種類を用意した。3)予備調査により、それぞれ目的とする二つの性格特性と関連する行動と評定される記述を得た。 3.先行課題の作成(抽象的言語条件の実施):先行課題を作成し、行動の抽象的記述を用いて、この課題の効果を確認した。先行課題により活性化させた性格特性概念によって、あいまいな行動が解釈されるという先行研究と同様の効果を得た。 4.被評定者の行動のビデオ撮影:1の行動の具体的記述と同様の行動のビデオ撮影。
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