研究概要 |
保育者の認知・行動過程の検討(研究1、2)と保育者の影響過程の検討(研究3)。 研究1の目的は、保育志望学生及び保育者の育児観、発達観、対人援助観が、育児相談例に対する原因帰属と行動方略の決定にいかに関連しているかを明らかにすることである。現職の保育者46名、保育志望学生64名、育児中の母親47名に対して、郵送法により、育児上の悩みが子どもの年令段階に応じて、どの程度問題視的に認知されるのかを測定する発達観、その悩みが生じる素朴な説明(原因帰属信念)を収集する発達過程観、および援助方略を収集した。その結果、現職保育者ほど育児上の問題を問題視する子どもの暦年齢の幅が広く、また問題発生の認知においても、親の原因に帰属する傾向が少なく、援助方略においても直接行動を修正するような指示を出すのではなく、情報収集を行う傾向が強かった。この研究の一部は、「保育志望学生の育児問題に対する対応と発達経過に関する信念」という題のもと九州心理学会第58回総会(1997,琉球大学)において発表した。 研究2では、現実の保育場面の中で、保育者の暗黙の信念が、連絡帳、面談、園便りなどにいかに具体化されているのかを明らかにする。これに関しては現在、収集・記録した文書データの内容分析を実施中である。 さらに次年度に計画している研究3の「保育者の対応が保護者に及ぼす影響に関する研究」のために、現在、保育所や幼稚園に通園している保護者208名を対象に、育児相談において保護者が望む保育者の対応の特徴を質問紙で、また親からみた望ましい育児支援の在り方を自由記述で収集した。その結果、保育者を育児支援の相談資源としてとらえる保護者は少ないものの、相談の潜在的な欲求は強く認められ、保育者が相談対象となり得るためには、保育者からの働きかけを望んでいることが明らかになった。この結果の一部は、「育児不安の相談資源としての保育者の機能」という題のもと日本発達心理学会第9回大会(1998.3)で発表する。
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