英国のネオ・リベラリズム的政策によって、デュアリズム的経済体制の構築はなされ、現在でも続いているのであろうか。本研究は、移民に関わるデュアリズム的経済体制の有無を、戦後英国という時期・地域を対象とし、エスニック階層という研究視覚の下で明らかにする。 戦後英国に入国した移民で重要なものには、カリブ系、インド系、東アフリカ・アジア系、パキスタン系、バングラデシュ系が存在する。彼らの階層的位置づけが本研究での焦点となる。 一般的なエスニック階層の理論には、2種類のものが区別された。 1つは、移民が「下層滞留」するというエスニック・デュアリズム理論である。もう1つの理論として、移民が階層上昇移動を果たすというエスニック・プル-ラリズム理論があった。これらの理論的プロフィールが、戦後英国の移民たちに当てはまるのかどうかが分析の鍵になる。 労働市場においては、70年代から80年代の動きでは、カリブ系は階層上昇移動を果たしながらも、白人系よりも低い位置にいた。それに対して南アジア系は、産業セクターを加味すると白人系ともカリブ系とも異なる独自の動きをしていた。 さらに、90年代の移民の動きは職業レベル的な階層区分では、カリブ系の男性やパキスタン系の男性女性、バングラデシュ系の男性が下層停滞の傾向を見せている以外は、上昇移動の様相を見せていた。しかし産業セクターを見ると、「エスニックな場所」と言える特定の産業セクターへの集中という事態が発見された。 次年度の課題として、住宅市場におけるエスニック階層を把握すること、そして、移民の職業選好に注目してエスニック階層を考察することが残されている。
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