今年度は、読売新聞紙上の身の上相談にあらわれた人々の「不幸」の特徴とその歴史的変化を探求することを通して、不定型データの分析法を模索することに研究の重点が置かれた。まず、1934年、1964年、1994年の三時点に関して、それぞれ、約110強、合計343の身の上相談記事を系統抽出した。次に、そのすべての記事をテキストファイルに変換した。1994年については、オンライン上から記事の大部分が入手できるので、テキストファイルに変換する手間はほとんど必要ないが、1964年、1934年の記事に関しては、オンライン上から入手できない。そこで、記事のコピーを入手し、OCRでテキストファイルに変換することを試みたが、文字がつぶれているため、現在のスキャナやOCRソフトの水準では、不可能であった(デジタルカメラも使ってみたが、スキャナよりも精度が低いため、うまく行かなかった)。最終的には、手作業で記事を入力した。 個々の記事に関して、autocode.awkを使い、コーティングした。これを計量分析し、相談の内容、その背後にある生活世界の歴史的変化を考察した。相談者に関しては、1934年では、ほとんどが20代の女性であったのが、次第に高齢者も含めた広範な年齢層に広がっていった。相談の内容に関しては、社会関係や家族制度との軋轢から生じる悩みが次第に減っていき、自己の内面に焦点を合わせた悩みが増えていくという傾向が明らかになった。
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