本研究の第一の目的は、1993年より京都市南区東九条地域で開催されている「東九条マダン」というまつりの実施状況を社会学的に把握することにある。開催当日(11月3日)およびそこに至る準備過程を参与観察し、関係者への聞き取り調査を実施した結果、次のようなことが明らかになった。 (1)このまつりは、朝鮮文化の表現を通じて在日韓国・朝鮮人の存在を顕在化させ、同時に民族文化の世代継承を進めることを第一のねらいとしているが、実際には多くの日本人も運営に参加している。 (2)さまざまな立場の人々の共生をも目指すまつりであるため、<日本人>、<障害者>なども運営に参加しているが、朝鮮文化の表現という中心テーマとどのように関係をつけるかについて葛藤が存在する。 (3)<地域のまつり>であることを目指し、公立の小中学校を毎年会場としているが、実際の積極的参加者は地域外の人が多く、十分に地域に根差したまつりとなるには至っていない。 (4)回を重ねるにつれて準備・運営はスムーズになったが、何のためにまつりをするのかを議論し再検討する機会が減り、ややルーティーン化しつつある。しかし一方で、それを反省し問題意識を再活性化させる場を作ろうという動きも、最近生じつつある。 このまつりが地域社会とどのような関係を有しているか(本研究の第2の目的)を、調査の継続によって明らかにすること、および収集した取材記録、諸資料や文献を活用してまつりそのものの構造と機能をより深く把握することが次年度の課題である。
|