本研究は、九州全市町村の過半数を占める過疎指定地域における高齢者福祉の問題状況を類型的に明らかにし、過疎地域における地域福祉システムのあり方を探るために次のような課題について分析を行った。(1)九州の過疎地域における人口動態や高齢化の状況・社会基盤等を統計的・類型的に把握する。(2)全国の平均よりもはるかに高い高齢化率にある過疎地域において、注目すべき地域福祉システムを核とする町づくりの取り組みについて具体的に明らかにし、その成立条件を探る。(3)福祉サービスの多元化がいわれる中で、過疎地域における多様な福祉サービスの展開とその担い手像の可能性を具体的に明らかにする。 平成9年度は旧産炭地である長崎県において住民のアンケート調査を実施し、過疎地域における福祉資源のネットワーク化の必要性が確認された。10年度は福岡県・長崎県の農村地域を中心に現地調査を実施し、福祉資源としての集落組織の可能性についてみることができた。また、東日本の福祉先進事例を岩手県と群馬県で現地調査した結果、九州を中心とする西日本と東日本では福祉サービスの展開と担い手についての相違をみることができた。これらの比較を通じて、福祉資源の乏しい過疎・農村地域において地域差に応じて人的物的福祉資源をいかに有効に活用しうるかが当該地域の地域福祉システムを形成する上で重要である点を暫定的な結論として得ることができた。
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