研究概要 |
9年度は、本格的調査に先立つ予備的調査をおこない、それに基づいて、基本仮説の構想をおこなった。 まず、インターネット上で、ネットと文系大学教育との関連について興味深い実践をおこなっているキーパーソンを探し出した。これは、一部は、大学の教員であり、また、一部は、学生であった。第一に、これらのキーパーソンと、電子メールを通じて意見交換をおこなった。つぎに必要に応じて、現地に出向いて、視察取材をおこなった。今年度は、東京大学本郷キャンパスの学部生・大学院生、同社会情報研究所の大学院生、東京大学駒場キャンパスの大学院生,京都大学学生などにインタビューをおこなった。これらを経て、予備的な仮説を構成した。 仮説は、おもに、二つに分かれた。一つは、コンピューターネットと大学生の就職問題との関連についてのものである。コンピュータネットそれ自体が現在大学生の就職活動に大きな影響を与えていることはいうまでもないが、学生時代に就職というテーマをめぐってネット上で知り合った学生相互が、卒業してのちも、一種の「戦友」として、社会的コネクションを保持していることが見て取れた。 二つ目は、学生の一種の階級分化の問題とネットワークとの関連である。目のまえに利用可能なネットワーク資源があっても、それを積極的に利用する学生もいれば利用しない学生もいる。このような違いにはどのような原因があるのかという問題にかんするものである。仮説的な回答案は、ネットを積極的に利用しないのもそれはそれで合理的な適応行動ではないかというものである。 次年度においては、おもに、以上の二つの視点に基づいて仮説の明確化をおこない。仮説の検証をおこなう予定である。
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