就職前ネットワークによる、就職後ネットワークの形成 本研究によって、「就職戦友ネットワーカーたちのコネクション(新しい社会的資源)」がネットワークを介して出現しつつある、ということが見いだされた。「学生どうしの情報交換」にかんしては、ネットは、非常に大きな効果を発揮している。とくにメーリングリスト(登録者全員に、登録者からのメールが転送されるシステム。事実上の「会議室」となる。)と、「就職日記」(あるホームページに、閲覧者が自由に、自分の就職活動の現状・疑問などを書き込み、誰でもが、閲覧回答できるシステム)が、効果を発揮しているようである。このメーリングリストと、就職日記においては、掛け値なしで「ナマ」の情報がやりとりできる。 このように、インターネットは、就職にかんして、「学生間コミュニケーション」においてとくに力を持っているのであるが、さらにこれによって【予期せざる結果】が生じつつあるように思われる。すなわち、こうして「就職」を「縁」としてできた「学生間ネットワーク」が、「就職が終わっても消えない」のである。 ネット上の学生たちは、就職をめぐるネット・ワーキングにおいて、いわば【戦友】的体験・コネクションを獲得しつつあるようなのだ。彼ら自身が言っているように、このネットワークは、彼らが入社したあかつきには、すぐさま「異業種交流ネット」に転化しうる。ある視点からすれば、「会社人間」(あるいはせいぜい「学閥人間」)でしかない上司たちより、彼らの方が(潜在的には)「世間が広く」なる可能性すらあるといえるだろう。
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