ハンセン病者のライフヒストリー(Narrarive life history)をてがかりにして、「老い」というものがはじめから自明に存在するのではなく、社会的に構成されていくという過程を明らかにしていく研究の前段階とした。特に、多摩全生園、長島愛生園のハンセン病者の療養所に赴いて実際にそこにすむ高齢者の方々からライフヒストリーをとることができたことは研究の視点を明確にする一つの成果となった。また国内外の関連文献(ライフヒストリーに関する文献、ソーシャルワークにおける社会構成主義、物語モデルに関する文献、ハンセン病に関する文献、その他)を収集、レヴュ-していくことを通して、問題意識をより鮮明にさせることができた。これにより、特に、ハンセン病と社会構成主義的枠組みにかんする自分なりの構想が生まれてきた。またそれらにかんする国際的な比較の視点をもたせることができたが、例えば北米のネイティヴ・アメリカンの問題も同種の枠組みで捉えることが出来るのではないかという仮説をもつことができた。 次年度はこれらの資料・仮説などをベースにして、具体的な研究成果を挙げていきたいが、その際、本年度の研究で明らかになったことの一つに、当初計画していたことのほかに、ハンセン病者とそれをとりまく社会そのものの歴史をもう少し研究する必要を感じた。なぜならこの領域は余りに未開拓であり、そのことを明らかにしなければ、それに付随する「老い」の構成も明らかにならないと考えるに至った。したがって、次年度はハンセン病史を更に社会関係のなかで明確にし、これを踏まえ、「老い」の社会的構成という過程を明らかにしていくことを計画している。
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