本研究では、要援護老人を自明のごとく援助対象として把握する従来の研究を批判的に検証し、「老い」の自明性を根底から疑い、ライフヒストリー(Narrative life history)をてがかりにして、「老い」というものがはじめから自明に存在するのではなく、社会的に構成されていく過程に焦点をあてるという一つの視点を提示することができた。その結果、援助介入方法であるソーシャルワークにも抜本的な価値変革が求められることが明らかにした。特に、ソーシャルワークにおける社会構成主義的方法論は、この問題を解決する有力な援助法として可能性を有していることがわかった。 しかしながら北米ではポスト・システム論として最近、社会構成主義的ソーシャルワークモデルが出現し、注目されているが、日本では一部の論者を除いてソーシャルワークにおける社会構成主義研究は等閑視されている。これらを踏まえ、今回の研究においてソーシャルワークにおける社会構成主義理論に関する国内外の文献を収集し、レヴューし、整理することができた。今後これら詳細な分析を通して、社会構成主義理論に基づく高齢者福祉論の援助介入方法に具体的な新たな視点を提示できることが期待される。 また日本とカナダという高齢者自身による意味づけという国際比較の視点をもったこれらの調査研究は、これまでにない独創的な研究の一つであるといえ、今後更に発展させていくことが期待される。
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