本研究は、家族の形成過程(結婚・出産)のありようが、妻・母親である女性個人の職業経歴の展開の規定要因として、いかに作用しているかに関心がある。いわゆるM字型就業といわれる「中断再就職」パターンの職業経歴は、女性固有のものであり、また高度経済成長と呼応して一般化してきた。一方で近年わが国では、「結婚退職」から「出産退職」へと職業経歴の中断のスタイルに変化が生じていることも指摘されている。本研究は、ライフコース論の視点から、家族の形成過程と女性の職業経歴の展開の過程を実証的に考察するものである。家族役割と職業役割の移行にみられる共時性に着目し、確率論的にそのメカニズムを説明することを目的としている。 本年度は出来事史データの作成作業を行った。4つのコ-ホ-ト調査研究データから、1914-71年出生コ-ホ-ト女性の出来事史データを作成したが、その際に、(1)調査研究間の変数の統制、(2)データ打ち切り処理、(3)出来事史(人一年)データの作成という手順を踏んだ。研究協力者ならびに業者への委託を経て、本年度中に完成の予定である。 来年度はこの出来事史データをもとに、生存時間分析を中心とした確率論モデルの構築作業へ着手する予定である。
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