本年度は、災害復旧・復興諸事業のうち被害者の「生活再建」の中核をなす個々の「住」生活再建問題に焦点を置き、これまでの国内被災各地の関連事象・課題を、既存資料・研究、新規調査等から概観し、あわせて、海外同系研究の論点とその研究成果の社会的還元の実例を参照しながら、我が国災害対策の現況と課題を国際比較研究の視点で概観してみた。 雲仙普賢岳噴火災害の直接被災地の一集落「上木場」では古里再興が隣接地での復興公共事業(三角地帯嵩上)で担保されながら復興住宅団地で新たな生活が蓄積され始めている。 北海道南西沖地震津波災害の被災害(青苗地区)では、コミュニティ再興が漁港整備の公共事業で行われながら、一方で高所移転への様々な思惑により復興コミュニティの分断(高台・低地)の様相を呈し始めている。 阪神・淡路大震災の一被災地「にしきた」(阪急西宮北口駅北東・復興二種再開発事業)ではこれを機に被災以前からの面整備構想が具体化し、職・住再建が復興事業の中で担保されながら今年度末、再開発ビルの起工式が行われた。 なお、欧米の同系研究(Post-Disaster Housing Reconstruction)では(超)長期的時間軸の設定が前提とされており、同様の発想に基づき本研究では我が国の復興公共事業と生活再建の連関が考察され始めた。また、PDHRでは階層性による不平等構造の再生産が指摘されており、この点に関する考察は本研究の次年度の課題である。
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