1988年に精神衛生法が精神保健法として改正されて以来、この分野での福祉的施策、制度、施設などの改善は急ピッチで進行している。その大きな変化のなかで、精神障害当事者、家族、医療・福祉の関係者すべてが、進むべき道を模索している。報告者は、この変化を社会的相互作用過程として記述し、理論化することをめざしている。この試みは、社会学理論の発展に貢献し、「こころ」の安らぎを求めて宗教や心理療法への関心が高まっている現在を、従来とは違った角度から照射するものである。 本年度は、平成9年度に名古屋の患者会で採録した、メンバーたちの精神障害者小規模作業所での経験をめぐる座談会の分析を進め、シンボリック相互作用論におけるグランデッド・セオリーなどの技法を用いた解釈を執筆した。さらに、平成9年度以降、2度訪れた沖縄県那覇市での精神保険福祉の実践について、名古屋・大阪での実践と比較していく。また、シカゴ・モノグラフ、プラグマティズムの社会・科学論とシンボリック相互作用論の関係についても研究を深め、その理論的伝統を明確化する。そして、近年の分析技法としては、話法・会話分析の技法への理解を深め、精神保健福祉に関する枠組みを構成する。その枠組みに基づき、フィールド調査によるデータを整理し、これまで積み重ねて来た社会心理学的な枠組みに基づいて、収集した資料を整理していきたい。
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