平成9年は、以下の2点を中心に研究を進めた。 1.先行研究の整理およびアンケート調査による、若年層のメディア行動とパーソナルコミュニケーションの全般傾向の把握。2.特にマニア、あるいは「おたく」と呼ばれるグループを対象とした友人関係・コミュニケーションについての聞き取り。3.1、2の比較検討により、「おたく」特有のコミュニケーション構造の仮説を提示する。 結果としては、所謂「おたく」と呼ばれるグループにおいても、メディア‥パーソナルコミュニケーションについては、オピニオンリーダー‥フォロワ-の図式が成立しており、彼らの情報行動には人間関係ネットワークが介在していることが明かとなった。逆に従来指摘されてきた「おたく」像、すなわち「メディアのみと向き合い、対人関係においてはコミュニケーションがうまくいかない」タイプはほとんど発見できなかった。ただしこうしたコミュニケーション関係は、主として趣味情報を媒介として形成されるものであり、一般若年層との対比や彼等のパーソナリティ構造までに踏み込んだレベルでの仮説提示については、なお検討の余地が残された。
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