平成10年度は、「おたく」グループにおけるメディア/パーソナルコミュニケーションの問題について、インターネットとの関連から考察を進めた。 周知のように、インターネットは95年のブーム以降爆発的な普及をとげ、今日では単なる情報収集の手段としではなく、新たな人間関係のメディアとして注目されている。現在ネット上には様々なジャンルのマニア向けホームページが開設されており、こうした仮想空間上の場を通じた情報の交換や交流が他方メディアを介した人間関係にはネット荒しや個人攻撃などトラブルも多く指摘されており、社会問題化しつつある。 そこで当初予定の11月調査の対象を、ネット上に形成されるマニアグループとし、特に掲示板やチャットの運営者に比重を置いて聞き取りを行った。 結果、得られた知見としては、 1. ネット上で形成されるマニア同士の擬似的な人間関係においても、OFF会等を通じてフェイス・トウ・フェイスの人間関係に発展することも多く、ネット上のトラブルを解決する上で、こうしたパーソナルコミュニケーションの果たしうる役割は大きい。 2. またオピニオンリーダーとの関連から言えば、往々にしてパーソナルな人間関係に比重を置いているマニアに、オピニオンリーダーとなっている者が多い。彼らはメディア媒介のコミュニケーションで情報源のすそ野を広げつつ、それを具体的な人間関係に発展させることで、より自らの世界を拡張する指向にあり、彼らを中心に形成されるマニアグループでは、人間関係指向性の比較的弱い者立ちほど周辺に位置する傾向がある。しかしそれは当事者にとって疎外感等のともなう関係性ではなく、まさにON/OFF自在な間接的で居心地のいい関係であるように思われる。
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