本研究は、戦後の学術政策と科学技術政策の関係を分析するため、日米の学術政策、科学施術政策について、戦後の政策機構及び政策の形成・変化とその背景を、経済、産業政策等をも考慮に入れつつ考察した。その結果、総じて米国の方は学術政策と科学技術政策の関係が密接で区別がなく、日本の場合は学術政策が一定の独自性を有することがわかった。米国では、独自の学術政策があるというよりも産業経済政策や安全保障政策の一環として基礎科学が位置づけられ、ただし高等教育政策とは切り離された形で基礎科学政策が展開されてきた。他方で日本では、概して学術政策は科学技術政策とは切り離されてむしろ大学政策の一環として行われてきた感がある。ただし、これは時期によってかなり変化があり、例えば1960年代末から学術政策は高等教育政策に対して一定の独自性を持つようになるし、科学技術政策と密接に関わる時期がいくつかある。近年は科学技術政策とも密接に関わりを深めている。こうした日米の違いは、政策機構の違いによるところが大きいが、大学の学術研究の社会的な機能や社会的な位置づけ等にもよるものと考えられる。あるいは学問に対する分化や風土に規定されるところもあるかもしれない。今後の課題としては、こうした違いの背景の要因の分析を行いたい。また、本研究は結果的に主に日本の学術政策について分析し、米国についての考察は不十分であり、米国さらには他の国との国際比較も今後の課題としたい。
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