本研究は、当該研究領域(「性(ジェンダー)と教育」研究)において、これまで積極的な研究対象とされてこなかった「高学歴主婦(高学歴を取得しながら今日では主婦業を営んでいる女性)」あるいは「高学歴主婦予備軍(職業達成を主たる目標とすることなく学業達成を遂げてきた女子学生)」に焦点をあて、学歴の機能とジェンダーについて考察することを目的とするものである。従来の研究において高等教育学歴の機能は、職業達成との関係において考察されてきたことがもっぱらであったが、「高学歴主婦」、「同予備軍」にこの枠組みをあてはめることは不可能であると考える。 本年度は当該領域の先行研究文献の収集と知見の整理、および過去においていくつかの女子大学で行われてきた卒業生調査のデータ整理を中心に行った。文献レビューを行った領域は、(1)ジェンダーと教育研究、(2)フェミニズム研究、(3)学歴の社会学、(4)高等教育研究、(5)ライフコース研究の各領域である。 来年度前半には、古くから女子高等教育機関として実績のある大学の卒業生を対象に、過去のライフコースと現在のライフスタイルを中心とする質問紙調査を行う。分析にあたっては「高学歴主婦」と「高学歴キャリア女性」の双方を比較し、主婦と学歴の関連の特異性を考察する。また、高学歴主婦を対象とした小規模な面接調査を行い、高学歴主婦における高等教育学歴の機能について考察を深化させる。後半では2年間の研究調査の結果を分析し、報告書を作成する。
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